行き交うフードデリバリーの兄ちゃんたちを見ながら、世の中の難しさについて考えた

行き交うフードデリバリーの兄ちゃんたちを見ながら、世の中の難しさについて考えた

2021/10/25

だいたい毎日、夕食を食べ終わると夜の散歩に行くようにしています。時間帯は19時くらいのことが多いです。散歩といっても小区(団地)内をぶらぶらと歩くだけですが、その散歩中にある人々を見て、ふとさまざまな考えが巡ってきました。
そのある人々とは、忙しそうに走り回るフードデリバリーの配達員(外売小哥)です。

散歩中に見る無数のデリバリーの兄ちゃん

中国ではコロナ前よりずっと前から、フードデリバリーが発達していまいした。さらにコロナ禍でその需要は大きく増え、以前にも増してフードデリバリーの配送員を日常的に見かけるようになりました。たとえばこの記事によると、2020年度のフードデリバリーの注文数は全国で171.2億回とのことです。ちょっと想像もつかない数字ですね。
そんなこともあって、僕が散歩をしている時にもかなりの高頻度でフードデリバリーの配送員を見かけます。一度散歩に出れば必ず出会う、どころか必ず複数人見かけるといってもいいでしょう。
しかし、あまりにその数が多いのでちょっと違和感を覚えることもあります。同じ会社の配達員が別々に小区に入っていってはさまざまなところに散っていき、また似たようなタイミングで出ていく、というような光景も多く見られます。
極端な時など、これまた同じ系列の会社の配送員がそれぞれ荷物を持って同じエレベーターに3人も乗っている、というような時もあります。彼らの持っているものもせいぜい1袋か2袋の食事、もしくはミルクティーが2杯とかだけです。もうちょっと効率化できるのでは、と思います。
もちろん彼らはいろいろな場所から食事を届けているので、配達を一本化するのは簡単なことではありません。しかし、同時間帯に同じ会社で管理している配送員が集まるのであれば、彼らがどこか一箇所に集合し、そのうちひとりに小区内の個別配送を託すような仕組みを作ればよさそうだな、などと素人考えながら思いました。

効率化したとして、その先は?

しかし、そのような効率化が進んだ先に起こることを考えれば、そんなに単純な話でもないような気がしてきました。配達の効率化が進めば、必要な人手や労力は減っていくことになります。そうすれば当然、ひとり頭の収入を得るチャンスも必然的に少なくなります。
いま調べてみると、フードデリバリーの配送員が受け取ることのできる給料は一つの注文につき約5元(≒85円)だそうです。先に挙げた「ぼくのかんがえた効率化」みたいなことを実施したとしたら、これがさらに目減りすることになります。そんな「効率化」だったら、配送員の人々からすれば迷惑なだけでしょう。「最後まで俺に運ばせろ!」となるはずです。
3人が同時に同じマンションに配送するという「非効率」は、ある意味では配送員の利益の源泉となっているのです。これを変えるのが果たして正解なのか、という気もしてきます。
また、こういう細かい効率化の話をしなくとも、そもそもデリバリーをドローンによって無人でやってしまおうという動きもあります。
これが推し進められれば確かに便利で人手がいらなくなり、社会的には「効率化」が進みますが、一方ではこれまで配送員をやっていた人々は職にあぶれることが容易に想像できます。やはりここでも「効率化」と、「非効率から利益を得ている人」の利益相反があります。
かように、「効率化」というものはそう単純でもないよな、ということを思いました。

豊かな中国に育った嫁の、現代の中国人らしい意見

などと脳内に巡った考えを嫁に話してみたところ、非常に「いま」の中国人らしい答えが返ってきたので、それも記録しておきます。
たとえばドローン配送が進んだら、それを操作する人とか管理する人みたいな新しい仕事が生まれるようになるから、あんまり心配ないんじゃない? なくなっていく仕事のことを心配するよりも、新しいことに目を向けたほうがいいと思う。
嫁は改革開放後の中国に生まれ、世の中がどんどん豊かになっていくのを見ながら育ってきました。時代の流れによってなくなった仕事や職業もあるけど、それでも中国は発展してきたし、あまり心配していてもしょうがないのでは、という意見です。
なるほどこれはこれで一理あるどころか、確かにそうだなと思わせるものではあります。ある一群の人の利益を犠牲にしてでも産業構造の変化や技術革新を進めて世の中を前に進めていかなければ、最終的にはみんなそろって共倒れです。それは、いまの日本を見ていればよくわかることです。コスパ意識だけにこだわり、いまあるものの効率化だけ進めていても、世の中は前に進まないのです。
もちろん「多少の犠牲はしかたない」と単純化して開き直ることが正解でもないと思うし、そのような変化の時に割りを食うのはいつも社会的弱者であるという点も見過ごせない問題ではありますが、きっとその辺りのバランスをとっていくことが大事なのでしょう。
そんなことを、忙しく行き交うデリバリーの兄ちゃんたちを見ながら、ぼんやりと考えました。

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