日本人の会社との付き合い方って変わるんだろうか。中国人と比較しながら考えた

日本人の会社との付き合い方って変わるんだろうか。中国人と比較しながら考えた

2021/10/10

野本響子さんが、炎上した広告の「今日の仕事は、楽しみですか。」を受けて、日本人と会社の付き合い方について書いていました。
みんな会社に疲れてるんですね。
途中で引用されている橘玲さんの記事によると、日本のサラリーマンは世界的に見ても会社のことが嫌いで、会社を信用していない人の割合が多いそうです。正社員になって相対的な「勝ち組」になったのだとしても、なかなか内心の幸福というのは手に入れ難いものなのだな、としみじみ思います。
今日はこれらを読んで考えた、中国人と日本人の「会社の関わり方」について思うところを述べてみたいと思います。

会社に対してドライな中国人

中国の人は会社組織というものに対して、ほとんど思い入れを持ちません。少なくとも日本人のように「会社のために」働くという意識はほとんどなく、いかにその中で自分の利益を最大化するのか、ということを念頭に置いて行動します。
このnoteにも書きましたが、中国人にとって社会の出発点は血縁的な意味での家族であり、会社を生活の中心に置くことはほとんどありません、むしろ、みんな会社は自分にとって有利なリソースを引き出すための場と割り切っています。
具体的にはキャリアや人脈を広げるための踏み台であったり、自分が成長するための知識を得る場として捉えている人が多い印象です。まあ、さらに直接的でエクスストリームな例として、「中抜き」「癒着」「賄賂」などの形でそれらが出現してしまうこともあるのですが(「中国 購買」といえば……みたいなところがあります)。
ともあれ「今日の仕事は楽しみ」かどうかは別として、会社に思い入れがないのですから、逆に会社や仕事に強い憎しみを抱くようなことも少なく、会社で心を病むような人もそれほど多くないように思います。イヤならとっとと辞めちゃう、という人も多いですし。
中国人の会社との付き合い方は、日本人のそれよりいささか健康的に見えます。

日本の現状には合わなそう

ただ、このような行動様式や意識を日本の会社や日本人がそのままインストールできるのかというと、うーん……という感じはします。
まず、会社に思い入れがなく人が簡単に辞めてしまう状況では、会社にとって優秀な人材を繋ぎ止めておくためのコストが増大します。中国の日系企業なんかでも、たとえば部長クラスの給料を比べた時に日本人駐在員よりも中国人社員の方がよっぽど高い給与を得ているということが往々にして聞かれます。
なぜなら、優秀な中国人社員はしょうっちゅう賃上げ交渉に来るからです。特に日系企業では上記したような「役得」としての立場を利用したムーブが認められにくいので、給料くらいしかモチベーションを保つ方法がないということも関係しているかもしれません。
「失われたウン10年」が常態化した日本で、そのようなコストを払える日本の会社というのもそれほど多くないような気もします。給料に傾斜があるという状況も、従業員から見ればあまり気持ちがいいものではないですしね(実際、中国人よりも給料の低い日本人駐在員たちは酒席でめちゃくちゃ文句を言ってました。日本人はどこまでも平等主義です)。
さらに、日本でも近年では「会社をキャリアアップのために利用しよう」みたいなことがよく言われるようになってきた気配がありますが、そんなにうまくいかないのでは……と考えてしまいます。
新しく、若い人がやっているような会社はそうでもないかもしれませんが、日本の企業では基本的に「思い入れ」と「出世」(つまり、よい待遇や経験)がある程度ワンセットになっていることが多いのではないかと思います。会社に強くコミットできる人間でなければ、そもそも転職するために役立つスキルや経験を得られないという矛盾があるというか。
これらは体質として定着してしまっていることであり、ある日とつぜんガラッと変えることは難しいでしょう。たぶん、そういう意味で日本の会社が大きく変わることはないのではないかと思います。

日本人は「最後の帰属先」である会社を捨てられるのか

あともう一つ、会社ではなくそこで働く労働者側の問題というか習慣として、日本人は会社に思い入れを持たなくても安心できるほど家族を大事にしていない、ということがあります。自分自身を鑑みても思うことですが、日本人は会社に縛られたくない以上に、家族に縛られたくないのです。
中国人から見て「日本人は家族に冷淡すぎる」と評されるほど、日本では家族に対する帰属意識が薄く、また一定の距離を取ろうとする傾向があります。「親しき仲にも礼儀あり」を、どこまでも貫こうとするのが日本人なのです(ちなみに「親しき仲にも礼儀あり」の出典は論語だそうですが、中国人の家族や友人への過干渉やデリカシーのなさをみていると「ホンマか?」と疑わしくなります)。
ある意味では血縁地縁的な伝統社会との決別として手に入れたものこそが、今の日本人にとっての「会社中心主義」な生活と、それにともなう(時にブラックで逃げがきかない)企業社会だったりするのでは、と思います。
そんな日本人が会社組織への思い入れを捨て、いわゆる暑苦しい家族社会を大事にできるのか……? というと、それも難しいような気がします。独立独歩、孤高の一匹狼としてやっていける人ならいいですが、たぶん多くの人はそれほど強くありません。何らかの帰属先がなければどこかでやっていけなくなるのが大多数の人間です。
そんなわけで、日本人は会社や労働を憎しみながらも、たぶん会社を生活の中心に置くような習慣が大枠で変わることはないんじゃないかな……という気がしました。

結局大事なのは、自分がどうするのかということ

まあ、大枠でシステムが変わらなそうだからといって、別に絶望する必要はありません。結局はその中で自分はどうするのか、自分を幸せにするにはどういう方法が向いているのか、ということを考えるほかないのでしょう。
日本的な企業社会のアレコレが不満だからといって、中国的なもの、もしくは他の国のシステムが是であるとも、それが自分に合うものだとも限りません。中国は中国で、家族社会と先進社会の板挟みで大変そうですし。 大切なのは自分のいる国や社会のシステムがどのようなものであるのかを知り、その中での適切な会社組織との関わり方を見つけていくことです。過度に思い入れることもなく、かといって冷淡になるでもなく「会社」と付き合っていければいいのではないかと思います。それがどうしても無理なら、フリーランスになったり仕事以外に楽しみを見出すことなどでしのいでくことを視野に入れればいいだけです。
少なくとも、ただの広告にイラついて広告主をキャンセルに追い込むほど噴き上がらない程度には、自分をハッピーに保っておきたいものですね。
それではまた。

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