「後から来たのに追い越され」る中国と、「2番目のお客様こちらへどうぞー」の日本

「後から来たのに追い越され」る中国と、「2番目のお客様こちらへどうぞー」の日本

2021/10/15

昨日のnoteを書き、「中国 列に並ぶ」というキーワードで思い出したことがあるので、取り急ぎ書いてみます。
ついでに、相対的に浮かび上がる日本の「列に並ぶ」文化にかかる徹底した平等主義はやっぱりすごいんじゃないか(それはそれで息苦しいんだけど)という話もしたいと思います。

後から来たのに追い越され〜(by水戸黄門のテーマ)

中国の入国/出国のイミグレーションや高速鉄道のチケット売り場(自動販売機ではなく人が配置されている窓口のほう)、スーパーのレジなどでは、しばしば理不尽な現象が起こります。
普通、こういった窓口は複数用意されていますが、いつでもすべての窓口に人が配置されているわけではありません。時間帯や日によってはいくつもある窓口のうち1つか2つにしか人がいない、ということもあります。
そんな時に客(イミグレにいる人を客というのはちょっとおかしいですが)がまとまって押し寄せると、とうぜん窓口の処理スピードが追いつかず、そこには長蛇の列ができることになります。たとえば高速鉄道のチケットカウンターなど、今は自動化でマシになりましたが、かつては20分、30分と待たされることも珍しくありませんでした。
そんな時に、長くなった列を見かねてなのか、たまたま昼メシから帰ってきたからなのか、ともあれ隣の窓口に人が来て新しく開くことがあります。
そんなとき中国では何が起こるかというと、人が入りこんだのが見えた瞬間から元いた列の後方にいた人がダダダーッと新しい窓口に駆け込み、あっという間に列をなしてしまうのです。つまり、元の列の2番目とか3番目にいた人よりも、もともとは後ろに並んでいたはずの人が先に手続きを終えてしまう、という場合があり得るのです。こんな時は水戸黄門のテーマ曲の一節「後から来たのに追い越され〜」が脳内を駆け巡ります。
さすが中国、生き馬の目を抜く競争社会だぜ……とか思ったのですが、よく考えればイミグレにいる人とかは全員外国人なわけで、別に中国の規範に沿ってそうしているわけではありません。多分みんな誰かに咎められることがなければ、自分だけが得をしたい生き物なのでしょう。
(……正直に告白すると、僕も急いでる時とかはやってしまう時があります。まあそういう時は窓口が開くのがモタついて結局は大枠で損をすることも多いのですが

「二番目のお客様こちらへどうぞー」

ここで思い出したいのは、日本の「2番目のお客様どうぞー」というやつです。
日本でも窓口が複数並んでいて、あとから追加の窓口が開くようなことはあるかと思います。そんな時に、日本においても上述した中国のような「後から来た人が得をする」ということが起こることもあるかもしれませんが、大抵の場合は元から並んでいた人が先に手続きを済ませられるような配慮が働くのではないでしょうか。
その代表的なものが、コンビニなどでレジが混雑した時に見られる「2番目のお客様、こちらにどうぞー」です。あれはつまり、ちゃんと先に来た人が先に用事を済ませるようにしましょう、と言ってるわけです。この現象、中国だと絶対にない……とまでは言い切れませんが(実際に中国で似た状況を体験した人もいるようです)、まあほとんど起こらないことと言っていいのではないでしょうか。
少なくとも個人的には、日本にいた時はこの手のことでストレスを溜めた記憶がほとんどありません。日本はさすが配慮の行き届いた国です。神のごときサービス精神、徹底したO・MO・TE・NA・SHIはこんなところにも表れているのです。
しかし、手放しで賞賛できるのか? とも思います。そんな神サービスの裏には、たぶん日本で同じようなことが起こったらクレームの嵐になる、ということも関係しています。「先に並んでいた人が損を被る(後から来た奴が得をする)のはおかしい」「スジが通らない」ことの過度の内面化というか、骨の髄まで染み込んだ横並び平等主義の表れでもあるというか。それってちょっと、相互監視的で息苦しくもあります。
ある意味では「2番目のお客様どうぞー」は、日本の素晴らしさと息苦しさが表裏一体になっている現象とも言えます。コンビニなど社会の末端にまでこうした習慣が行き渡っていることはすごいことではありますが、ただでさえ無数にあるコンビニの業務に加えて、いつも気を遣わないといけない店員さんたちは大変になります。たぶん世界一大変な日本のサービス業。
昨日の記事にも書きましたが、中国の人々はそもそも列に並んだり、順番が多少前後することに感じるストレス自体がそもそも低く、「そんなもんじゃん」で済まされています。割り込みが注意されるようになっても、「2番目にお待ちのかたどうぞー」が中国で一般化することは考えにくいように思います。
どっちがいいのかはわかりませんが、ともあれこういうところにも日本と中国の違いがあるのだな、と改めて思いました。
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結局、どっちの社会システムというか規範も一長一短で、どこかが良くなればどこかで息苦しくなるよなー、という話でした。隣の芝生は青いし、青い芝生の影には青くない部分が必ずあるものです。
今日はそんなお話でした。ではまた明日。

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